野球場は野球ファンのためのものか?
少し前にTwitterで『野球ファンによる「こういう野球ファンはイヤだ」というツイートを発信する』タグである「#野球民こういう人ちょっとすみません選手権」がファンの間で少しだけ盛り上がっていた。
ただ、そこに集められたツイートを見てみると
・イケメンな選手しか応援しない顔ファンは来るな
・外野席に座ったのに声出して応援しないやつは何がしたいんだ
・球場に来てメシばっか食ってる奴ってなんなの?
というような、個人的には「別にええやないか」と思うような意見が多々あった。
一旦話が逸れるが、近年のプロ野球球団はエンターテイメント性重視のファンサービスを展開することが多く、純粋に「競技の魅力」のみで集客を図ろうとする球団は減りつつある。
早い話が『大谷の打撃凄かったな』『坂本の守備上手いな』というような「純粋に野球だけを楽しむコアなファン」では充分なお客さんが呼べなくなっているのだ。
そこで近年のプロスポーツ界では「競技+α」の考え方が定着しており、スタジアムグルメや試合前のイベント、マスコットキャラクターや球場内のアトラクションに力を入れることで「試合に付加価値を付けて」より多くの層のお客さんにスタジアムに足を運んでもらおうと努力している。
それに合わせて
「サッカーはあんまり観たことないけど美味しいグルメがあるから行こう」
「野球に興味はないけど球場のアトラクションが面白いから行こう」
というように、スタジアムに来るファンの楽しみ方は多様化しているのである。
そう考えると、純粋に野球が好きな元来のファンからすれば「何なんだこいつら」となるかもしれないが、その両者の間にあるのは
「野球」が好き
「野球の応援+グルメ」が好き
「グルメ+イケメン選手」が好き
という「何が好きか」という違いだけであって、その根本にあるのは「スタジアムに来て楽しみたい」という共通の思いなのである。
なのにファンの楽しみ方の多様性を受け入れず「違う」「こんな奴はおかしい」などと言って否定するのは現在のスポーツ業界の流れに逆行する行為であり、なにより、自らスタジアムの楽しみ方の選択肢の幅を狭めている他ならないのだ。
野球場は野球ファンだけが集まる場所ではない
スタジアムが「楽しみたい」という人の思いで一杯になれば、それでいいのだ。
カープにやっと現れた「まともな一番打者」
2015年開幕頃のカープは一番打者にルーキー・野間を起用することが多く、これがファンの間で物議を醸した
そもそも一番打者というのは、野球において四番打者に次ぐ2番目に重要な打順といえる
・最も多く打順が回る
・先頭打者として打席に立つことが多い
・8番石原9番投手と並ぶので、1番打者が打てないと自動で1イニング消化してしまうことになる(カープ限定)
この事を考えただけでも重要性は明らかである
とこが2015年春先一番打者の野間は、低めの緩いボールは巧く弾き返す能力があるのに対し、速球は甘いコースでもファールにしてしまううえに、選球眼の悪い選手だった。
それはシーズン終了まで(今シーズンに入っても)改善されることはなかった。
おかげで1番打者に本来なら3番を打つ丸を置かなければならなくなり、その代わりに3番に入った選手が不振にあえぐことで、1番丸と中軸打者が分断されてしまう結果となった。
しかし今季は開幕から田中広輔を1番打者として固定することに成功。
その田中は好不調の波こそあるものの、昨季のような「沈んだまま終わる1番打者」ではないことを昨日の試合のスリーランで証明してみせてくれた。
「シーズン通して安定した活躍を」
とは言わない、波はあれど1番打者っぽい成績に落ち着いてくれれば、昨年1番打者に悩んだカープにとってはそれで充分すぎるくらいである。
リセットされた「流れ」を上向きにした新井さん
野球というスポーツにおいて、最も失敗の起こりやすいタイミングは「始まる瞬間」であるといわれている
プレーボール直後の初回。初球。開幕戦。
それまでどんなに実績を重ねていようと、試合は0対0のスコアから、ペナントレースは0勝0敗から始まり、モノによってはそれまでの「流れ」さえもリセットされて始まるのだ
今年の夏も敦賀気比、花巻東という強豪校が初戦で敗れ、昨年も開幕から大型連敗を喫したカープは優勝候補ながらBクラスに沈んでしまった。
そして迎えたオールスター明け、後半戦最初の試合。
オールスター休みは「流れ」をリセットするには充分な期間で、昨夜も中日の好投手・若松の前にカープ打線は6回まで無得点。
しかしラッキーセブンの7回に相手のエラーで1点差にすると、無死満塁とチャンス拡大、ここで逆転できれば先発ジョンソンに勝利投手の権利が付く。
だが、カープ打線は鈴木誠也の犠飛による得点のみで同点どまり。2015年打線のような「先発投手の好投に応えられない」「攻めきれない」流れに傾きかける。
そんななか9回裏、ワンアウト走者なしで新井さんの放ったライトへの打球はぐんぐん伸びてスタンドへ、第11号サヨナラホームランで「攻めきれない流れ」を一球で強引に断ち切った。
後半戦の最初を白星で飾ったカープ。
一旦リセットされ、悪い流れ・良い流れのどちらになる可能性もあった中、「悪い流れ」になりかけていたカープを「良い流れ」へと引き上げた新井さんの一打には、今後のカープの方向性を指し示す「1勝」以上の価値があるのではないだろうか。